11/釣り






高貴な御方の  宮の奥

釣り糸垂らす太公望

一所に腰を落ち着けて

終日  そのまま居るという




宮の隠れ場  池の石

釣り糸垂らす太公望

狐が化けて出たのかと

その様  実に奇々怪々




拡けた空は  今日も青

釣り糸垂らす太公望

一度釣れるか尋ね聞き

ただ微笑みで返された




尊き御方の側に座す

笑みしか見せぬ太公望

皆を和ませ  場を癒す

陛下の笑みなどいつ以来




官の不安は民へゆく

石にぽつりと  太公望

旅から戻った幾人か

戦から戻るは  幾人か




身罷る星に経捧ぐ

傷も露わな太公望

行くべき場所があるのだと

翼とともに  かき消えた




久方ぶりの池の石

釣り糸垂らす太公望

成すべき事は成し得たと

久しい笑みに安堵した




今は昔の語り草

釣り糸垂らす太公望

その者  朱雀の星を受け

支えを得た者  数知れず








'07/04/14
宮廷の女官視点で。陛下思いの方だと良い。
「釣りと井宿」といえば、私の中で「ここ魚いたっけ?」「さぁ」(笑)



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