封
我の 存在が ……消える
今からおよそ 20年前
再び我らの眠りはとけた
流れ込む 下界の空気
人間達の 歓喜のざわめき
またか、と思った
また墓荒らしが現れたのかと
彼らは ただ我らを観ていた
掘り返すことなく 入れ替わり立ち替わり
だが
いったいこの不快感は何か
精気を蝕むような空気は
先の盗掘の時より 遙かに強く濃くなったそれは
じわり、
じわり じわりと
汚れが我らを食い散らしてゆく
人間達が気に懸けぬ間に
静かに 急速に
「もはや、結界の意味はない」
暗闇の中で 声が漏れた
朱雀はすでにその身を失い
神力さえ皆無に等しい
この上 東西の守護が消えれば
瞬く間に 流れ過ぎ去った千余年
彼らには十分すぎる時間だったらしい
互いのつながりを細め 我欲を増幅させるには
我らは黙した
下界には負の心が溢れている
そして それを糧とする魔神が此処に
もはや………
無音の闇の中
突然か細く声が震えた
久方ぶりに光を放ち その声は皆にこう告げた
「我が巫女に、四神天地之書を」
「あの娘か……、良いだろう」
揺らいだ青龍の声が響く
「最後に懸けてみようではないか」
輪郭を失った白虎が同じた
「我らの神力を朱雀星君に」
低く玄武は微笑んだ
喧噪とネオンが集う地に
朱い光は飛び立ってゆく
四神達の祈りとともに
……これが賭けでなくて何であろう
封印の外に奴を放すなど
…だが、「託してみたい」と我らは思った
多くの奇跡を起こした あの娘なら
その夜 少女は夢で聞いた
「……我を求めよ、我に力を」
闇と光が動き始める
'05/04/18
「20年」てのは、だいたいふし遊発刊の時ぐらいで。(およそ・推測)
去年6月頃、実物の高松塚古墳で
「白虎の絵(の線)が消えかけてる」との新聞記事を切り抜き、
つい先日の記事では「古墳そのものがヤバイ」と知り……。
勢いで書いて、長くなりすぎた…(汗
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