風
風がさざめく
耳の すぐ側で
この何年か
常に風の隣で暮らした
耳元を打つ 呻り声が
途絶えぬ叫び声に聞こえた
高く低く 抑揚をつけ
昼夜を問わず側にあった
避けることなど 出来なかった
常に離れぬ 風音
足に任せ
ひたすら歩き彷徨った
遠く響く 子らの声に
さえずる小鳥を思い起こした
高く低く 羽ばたき続け
疑いもせず空を駆けた
見えぬ姿に 涙こぼれた
常に止まぬ 風音
国を渡り
いつしか空は血臭を含んだ
か細く鳴いた 剣先は
命の途切れる音がした
高く低く 煙たなびき
地の荒廃を他村に伝えた
争う声が 何度も響いた
常に流れる 風音
ぬくもりを得て
再び風の中に戻った
にぎわう町に 近づくにつれ
人の活気に心癒された
高く低く 歓声上がり
あちらこちらで笑みが溢れた
生きている、と 肌で知った
常に感じる 風音とともに
常に共にある
風音
'05/04/27
やはり「井宿=風」なイメージが強いです、私。
BACK