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君の想いを 宙[そら]にかけよう
久遠が包む 光とともに
貴方の幸を 祈り続けよう
闇夜を照らす 灯りとともに
皆の唄を 天に刻もう
時を超えゆく 星になぞらえ
祭
日が落ちてそろそろ二刻、ようやく執務室の扉が開いた。
似合わぬほどに深い溜息をつき、彼は
。
ふと、宮殿のとある場所へと向かった。
想灯大輪。
そうひとりごちたとき、先客がいることに気付く。
「…井宿?」
「!……星宿様、もしや今まで御公務が?」
「あぁ、明日の準備でいろいろとな。」
立ち上がろうとした井宿を制し、星宿はその隣に腰を下ろした。
次々と開く夜の華。
散りゆく炎を見つめ、彼は呟いた。
「良い夜だ。」
「そうですのだ。」
「…皆は、どうしている。」
「美朱は、翼宿と柳宿に連れられて都に降りましたのだ。
鬼宿も、恐らく遅れて。」
「そうか。………美朱はまだ」
「大丈夫ですのだ、彼らがいるのですから♪」
満面の笑みに苦笑し、頷いた。
灯籠の影、人々の声が宮殿の端々へと流れてゆくかのようで。
彼は、今日何度目かの溜息を漏らした。
「軫宿と張宿も行ったのか。」
「いえ、張宿は…疲れていたようなので
早めに寝るよう言いましたのだ。
軫宿も、もう休んでいると思いますのだ。」
「そうか。」
時折、表通りでどよめきも聞こえる。
「しかし、お前は行かぬのか井宿。
せっかくの機会だ、楽しんできては」
「ありがとうございますのだ。
けれど以前一度行ったことがありますので、…親しい者達と。」
「…、そうか。」
「星宿様こそ、今日は年に一度の星見祭りなのです。
お忍びでいらっしゃってはどうですのだ。」
「いや、忍んでみても私の美しさは目立つからな。」
「そうですのだ(笑)」
「それに 」
いつしか華々は消え、
低くさざめく喧噪のなか、微かに笛のしらべが届いた。
「…好きなのだ。
毎年この場所から都を、民達の様子を眺めるのが。」
星に捧げる舞いが始まる。
身近な者の幸せを祈って、
大切な者達の無事を願って、
人々の笑みが、宙に花開く。
「良い夜だ。」
「…そうですのだ。」
例え側にいられずとも
いつか戻る日まで祈り続けよう。
星は、いつでも輝いているから。
いつまでも、そなたらを包んでいるから。
'05/07/08
星見祭りに実際こんな舞いがあればと思って。
どよめきの理由が柳宿の賞品稼ぎというのは裏設定(笑)